海老澤 侑, 刑法175条の再検討―旧刑法259条の立法,議論状況について
広義の性犯罪分野(性風俗犯罪、性暴力犯罪)を主な研究対象にしており、現在は、日本の刑法仮案の立法過程、ドイツ刑法の立法過程を調査している。
刑法175条の再検討 ―旧刑法259条の立法,議論状況について―
2018
刑法175条は,条文規定の不明確性といった問題を抱えているが,この問題は主に,明治期日本が近代法を導入するにあたって生じてきたことに端を発する. 本稿は,主に現行刑法改正前の規定である旧刑法259条の編纂過程からの議論状況を参照し,猥褻物関連の犯罪が日本にどのように受容,継受されてきたのかを考察するものである. 立法分野については,ボアソナードと鶴田皓との質疑から始まり,司法省の刑法編纂委員会の審査修正を経て,元老院の審議までを参照し,西洋法の考えと日本の性風俗観を取り入れた法律である旧259条の制定過程を明らかにしていく. その後の議論,法解釈の分野については,処罰根拠,諸要件について当時の法学者の見解をまとめ,旧259条が一般にどのように日本に受容されていったのかを確認しつつ,現行法との共通点,差異について考察を重ねていく.
ボアソナードは厳罰を提案している
鶴田が先ず, 1 項の刑の重さを問題視し,重禁錮を削除するよう求めているが,その理由として述べているのが,猥褻物罪は,当時の日本においては「極軽ク論スル」犯罪だという点である
元来之レハ日本ニテハ違警罪ニ処シ極軽ク論スル者ナレハナリ」.
それに対してボアソナードは,これらの行いが「幼者ノ淫行」を導き風俗を害することになる点から,前条の公然猥褻罪と同様に重禁錮を残すべきだと主張する.
だが,鶴田が量刑を下げる態度を崩さなかったことから,結果として重禁錮を残しつつも,その量刑は下げられることになる.
基素.icon ボアソナードはフランスから招聘されていて日本文化に詳しいわけではないだろうから、ミスマッチが起きる